OPのつくり方

「メイガスソウル」をPBW形式で遊んでみたい方で、ライター役をやる方のために、OPのつくり方を解説します。

OP(オープニング)とは、シナリオで扱われる事件の発端や導入をあらわしたものです。参加者を募集するお誘いの意味も含んでいます。

OP(オープニング)は「OP文章」と「シナリオガイド」からなります。

ここでは、OPの標準的なつくり方・作法を紹介します。特に意図がなければこの流れに沿うのがよいと思いますが、決まりはありませんので、工夫次第で、よりやりやすい方法や、楽しいやり方があれば考えてみてください。

※このページを読まれると、ちょっと難しいなあ、と思われる人が多いと思いますが、ここは理想論を書いていますので、恐れず、まずはやってみましょう!


OP文章のつくり方

OP文章は、「事件の発端や導入」を表現したものですが、同時に「シナリオのお誘い」でなくてはならないので、「小説の冒頭」として書くのは不十分です。

OPそれ自体が魅力的で印象的な描写になっていることは、それ自体は美点なのですが、OPの目的はそこにはありません。内容がわかりやすいことや、意図するシナリオの趣旨が果たせそうな、機能的なものであることのほうがより優先だと考えてください。

たとえば、以下の2つのOP文章を比べてみましょう。

<A>

 ごう――と、雪まじりの風が唸った。

 男の怜悧な瞳が、暗い森を見渡す。風にはためくローブには銀糸の刺繍。そのしなやかな指先が中空に複雑な術式の紋様を描き出していた。それはあたかも天上の楽団を指揮するかのよう。しかし奏でられる旋律は、死と静寂をもたらす氷の乱舞だけ。

「運命、か――。いや、しかし私は……」

 男が呟く声を聞いたものは、凍える梢のほかは誰もいなかった。

「風が……強いですね。まるで、泣いているようです」

 そっと眼鏡の位置をただし、ピロートーカーは窓の外へ視線を投げて言った。

 出された紅茶も、とうに冷めている。

 闘争か、あるいは。つきつけられた選択に、集まったものたちは黙り込む。

<B>

 ある魔法使いが、なんらかの理由でブギーマンになりかかっているという。

 すでに魔力を暴走させはじめており、男は周囲に吹雪舞う冷気の領域をつくりあげていた。さいわいまだ人家のない山中にいるが、このままでは被害が拡大するだろう。

 このことを察知したピロートーカーは、有志のメイガスたちを集めて事態を収拾するよう依頼するのだった。

「戦って倒すか、説得するかは、みなさんにお任せします。ですが、相手は非常に強力な力を持っていますので、十分に注意して下さいね」

この2つは一応、同じ内容のシナリオという想定です。

どちらがより良いOPでしょうか?

答はBです。BのOPは、簡素で味気ないですが、シナリオの内容をきちんと伝えていますので、雰囲気はあるけどなんだかよくわからないAのOPよりはるかに優れたOP文章です。

よいOP文章には以下の内容が含まれ、誤解なく伝わるものです。

<1>シナリオの目的

シナリオには、常に目的があります。これにはふたつの意味を含んでいます。シナリオの目的と言ったときそれは「参加するキャラクターの目的」と「参加するプレイヤーの目的」です。

キャラクターの目的は、「暴れているキマイラを退治する」「盗まれたオーパーツを取り戻す」といった、シナリオの趣旨となるものです。

「プレイヤーの目的」とは、最終的には「自分のキャラクターの活躍が見たい(読みたい)」ということです。PBWはひとつの遊びであって、OPはそのお誘いなのですから、OP文章では「このシナリオに参加するとこういう楽しいことがあるよ」ということがわかったほうがいいですよね。

たとえば戦闘もののシナリオは、「PCさんのカッコいい戦闘シーンを書きますよ」というライターからのお誘いです。プレイヤーの方は「このシナリオに参加すれば自PCのカッコイイ戦闘シーンが書いてもらえる」という期待を持って、そのシナリオに参加するのです。

<2>プレイングに必要な情報

OPは、シナリオのはじまりなのですから、ノベルとして書かれることになる本編への導入や発端が、わかりやすく書かれていたほうがいいです。いわゆる5W1H=いつ、どこで、誰が、何を、どのようにしているのかがわかるように書くとよいと思います。

書かれている情報は、プレイヤーがプレイングを考えるキッカケや手がかり、材料になります。「廃墟にキマイラがいるらしい」というだけの情報よりも、「廃墟に巨大なネズミのキマイラがいるらしい」という情報を出したほうが、「巨大なネズミに遭遇したときの反応」や「ネズミの習性を利用した退治方法のアイデア」などのプレイングを考えられるようになります。プレイヤーの方は、プレイングを考えるという作業が楽しくなり、ライターはよりよいプレイングが手に入ってよりよいノベルを執筆することができます。

ただし、そこで書かれる情報と、シナリオの目的との整合性には注意しましょう。たとえば、アクション描写が得意なライターが、「PCさんたちが肉弾戦で戦う様子を魅力的に描写する」ことを目的にするシナリオを考案したとします。しかし、そのシナリオに登場する敵が「相手に幻覚を見せ、トラウマを刺激して無力化する能力を持つ」といった設定の敵であればどうでしょうか? これはあきらかにミスマッチです。OPを読んだ参加者は「自PCの過去設定などを描写してもらえる機会」と受け取り、そのようなプレイングが集まるでしょうから、それはそれで面白いノベルができたとしても、ライターの意図とは乖離しています。この場合、敵は腕っ節の強い肉体派の敵として設定すべきでしょう。

<3>ノベルの完成形の予測

どんなノベルが出来上がるのかはプレイング次第……なのですが、プレイヤーの方は、シナリオに参加する段階で、そのシナリオの結果を予測し、期待を持っています。結果があまりに予測と違うと、期待を裏切ってしまうことにもなりかねません。

完成するノベルがコメディ系のものなのか、シリアス系なのか、どういった雰囲気のノベルになりそうかは、OPの雰囲気を統一することで伝えることができます。大半がアクションやバトルのシーンで占められるのか、推理や調査の比重が大きいのか、それとも心理描写に重点を置くのか。OPの文章で伝えるのが難しければ、シナリオガイドでの補足でも構わないので、この点を伝えておくと、プレイヤーのプレイングが無駄にならなくてすみます。

OPを作成する時点で、どのようなノベルが書きたいか、それはつまりどのようなプレイングを書いてもらいたいかを想定し、それに応じたOPを考案する必要があります。


シナリオガイドのつくり方

OPの、OP文章以外の部分は、シナリオガイドと呼びます。シナリオガイドは、OP文章だけでは表現しきれなかった補足をライター自身の言葉で書いて伝えることと、シナリオ運営の流れや条件などを書いたレギュレーションを伝える役割があります。

シナリオガイドでは、以下に挙げるような内容を伝えておくほうが、後々の運営がトラブルなくやりやすくなるでしょう。すべて、どのようにするかはライターの一存で決めて構いません。

参加資格 参加者をどの範囲から募集するかということです。特に制限なく募集しても構いませんし、たとえばTwitterのフォロワーだけ、など募集範囲を区切っても構いません。ライターの意向で、招待者(優先的に参加できるキャラクター)を設けるやり方もあるでしょう。具体的な資格をあげる場合(例:女性のみ)はキャラクターのことを言っているのか、プレイヤーのことかははっきりさせておきましょう。
募集人数 募集する人数の上限です。参加者が多いほど、シナリオの運営は大変になるので、上限は設けたほうが無難です。標準的なシナリオの参加人数は3~6人をおすすめします。下限(最小遂行人数。参加者数は満たなかった場合は運営を中止する)は設けても設けなくても構いません。
挙手の方法 参加希望者が、どのような方法で参加希望を伝えればよいかの方法を指示します。
挙手期限 挙手を受け付ける期限です。
参加決定の方法 募集人数を上回る挙手があった場合、どうするかの指針です。
・抽選
・一定の順位づけによる(先着順など)
・ライターの判断
など、参加者の決定方法をあらかじめことわっておきます。
プレイング形式 参加者に作成してほしいプレイングの形式を指示します。
最低限、文字数は指定しておく必要があります。
ほかに、必ず書いておいてほしい内容や、項目分けして受け付ける方法もあります(例:戦闘プレイングを300字、推理プレイング300字、書いて下さい、など)。
プレイング受付の方法 プレイヤーがプレイングをどのような方法で送ればよいかの指示です。
プレイング期限 挙手を受け付ける期限です。
完成予定 ノベル等の完成予定です。
完成後のプレイング公開 ノベル完成後に、プレイングが一緒に公開されるかどうかです。公開すると、どのようなプレイングをもとに、どのようなノベルを書いたのかが誰に対しても明らかになりますので、特に理由がなければ、公開しておいたほうがトラブルは減ると思います。

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