ナイトワンズ~異なる夜の眷属

異なる夜に関係し、この世界の脅威となる存在を総称してナイトワンズと呼びます。ナイトワンズはその発生源から「ペイシェント」「レジェンダリ」「ナイトゴーント」に大別されます。


ペイシェント

「異なる夜」がこの世界の生命に影響を与え、変異させたもの、それがペイシェントです。もとは通常の動植物や無生物だったものが、「異なる夜」のパワーにさらされたことで巨大化・異形化・凶暴化といったさまざまな変化をきたしました。

ペイシェントはこの世界の摂理にはそぐわない存在で、脅威や害悪になることがほとんどです。

ペイシェントもまた、魔法使い同様、結界に防護され、ソーサリーに準ずる魔力を帯びた攻撃を行ってきます。魔法使いが魔法による攻撃でダメージを与え続けることで異なる夜の影響を破壊し、ペイシェントをもとに戻すことができます。もとになったものは、その際、生命を失うことも多いのですが、それもまたひとつの慈悲と言えるかもしれません。

ペイシェントは、元になったものの種類によって細分化されます。


■キマイラ

キマイラは、人間をのぞく動物・植物が元になったペイシェントです。異形の姿になり、たいていは理性もないまま暴れることが多いです。それは恐ろしいモンスターとして人間の脅威になります。

キマイラになったときに、かれらは繁殖能力を失うため、こうした異形の生物が生態系を乱すことはありません。しかしこのことはかれらが群れにならないことは意味しません。ひとつの群れそのものがキマイラ化した事例は少なくありませんし、キマイラ化した動物が同種の普通の動物を操る能力を持ち、群れを率いて人里を襲うこともあります。

キマイラは動物以上の知能は持たないため、十分な準備をもって挑めば強敵ではありませんが、より上級のナイトワンズが人為的キマイラを創りだし、従えていることがありますので注意が必要です。

<キマイラの例>
メタルバイソン 牛がキマイラになったと言われる怪物で、鋼鉄でできた野牛のような姿をしています。巨大な角のほか、各所にそなえたスパイクで他の生物を刺し殺そうと突進してきます。体表はつねに血で錆び付いています。
フレイムリンクス 猫がキマイラになったとされるものです。大型のネコ科の猛獣に似た姿で、被毛はつねに燃え上っています。望むものだけを焼く魔法の炎で獲物を焼き殺すことを好み、人体発火現象の原因だと言われています。
ハンギングツリー 樹木がもとになったキマイラです。一見、ただ木の姿でたたずんでいるだけですが、周囲に「陰の気」を発散しており、それにさらされた人間は「この木の枝で首を吊りたくてたまらない」衝動に苛まれます。

■ライカンスロープ

人間がもとになったペイシェント(人間のキマイラ)を特にライカンスロープと呼んで区別します。キマイラ同様、異形の姿や特殊能力を獲得しますが、もとの人間の姿になることもできます。当初は人間の知性は保持しますが、人間の精神は自身の変異に耐え切れず、次第に正気を失っていくことがほとんどです。

生物のペイシェント化するメカニズムの完全な解明はなされていませんが、人間がライカンスロープになるのは、強い感情の発露と関係があるらしいと言われています。

すなわち、激しい怒りや哀しみ、絶望、嫉妬、虚無感といったものを経験したとき、そこに異なる夜が作用してその人間を変異させるというのです。

<ライカンスロープの例>
虎詩人 詩人を志しながらも挫折した人間がペイシェント化してしまったものです。夜ごと、鬱屈した思いが爆発すると虎の姿に変じて暴れまわります。月光の下でのみ、理性を取り戻すと言われています。
トートヘッド 禁断の知識をもとめ続けたため、ペイシェントになってしまった知識人です。頭部だけが鴇のそれに変じる異形化を獲得し、クチバシで人の脳をえぐって知識を摂取しようとします。
切り裂き魔 殺人衝動を心に秘めた人間がペイシェントになったものです。身体のどんな場所でも瞬時に刃物に変える能力をもち、すれ違いざまなどに人を切り裂いて殺害します。

■アンデッド

生物の死後に、その死体や霊魂からうまれるペイシェントをアンデッドと呼びます。その死体が生きているように動き出したり、肉体は朽ちたのに生前の記憶や感情が亡霊として出現したりするのです。

腐敗した肉体や骨だけになった姿で死体が動き出したり、死んだはずの人間があらわれたりといった出来事は、古くから、人間の根源的な恐怖を呼び起こすものとして語られてきました。

特に、激しい苦痛を感じて死んだり、強い恨みの感情を持っていたものの死体や霊はアンデッドになりやすいと言われています。

<アンデッドの例>
感染ゾンビ 腐乱死体が動き出した典型的なアンデッドです。生者を襲い、殺した死体もアンデッド化することで仲間を増やしていきます。ショッピングモールなど繁華街に集まる性質があります。
ルインマスター 地縛霊の一種で、廃墟に発生します。浮遊霊や、迷い込んだ犠牲者の霊などを吸収し、どんどん巨大な「霊の塊」に成長してゆきます。いびつな人体がでたらめにつなぎ合わされたような姿は正視に耐えないものです。
呪装兵屍 古代の野蛮な魔法文明で、人間の遺体から創造されたアンデッドです。ミイラ化した身体に呪文を記した布を巻きつけて強化しているほか、体内に潜む殺人スカラベの群れの死骸を操って攻撃してきます。

■ツクモガミ

異なる夜は無生物にさえ影響することがあります。特に、つくられてから長い時間の経っているものや、人の思いが強く向けられているものが影響されやすいとされ、結果、品物がひとりでに動き出すようになります。この存在を、器物に魂が宿るとした日本の伝承からツクモガミと呼んでいます。

通常は知性や理性をもたないが、まれに擬似的な人格を有するものもあります。

<ツクモガミの例>
血塗られた肖像画 貴婦人が描かれた肖像画がツクモガミ化したものです。人間を魅了して引き寄せ、絵の中の風景を模した隠夜に閉じ込めてその生命力を糧とします。犠牲者が増えるほどに描かれた貴婦人は美しさを増していきます。
パーフェクトスイーパー ロボット掃除機がツクモガミ化したものです。人の足をひっかけて転ばせた後、底面に発生した牙で、人間を「掃除」してしまいます。その後も掃除を続け、無人となったは家をピカピカに保たれるのです。
スクラップゴーレム 無数のスクラップが一斉にツクモガミ化し、集まって巨人となったものです。無目的に暴れまわり、甚大な被害をおよぼします。攻撃を受けても破損した箇所を切り捨てて活動できるため、強敵となります。

レジェンダリ

情報やイメージが異なる夜の影響によって実体化したものをレジェンダリと呼びます。情報のペイシェントと考えてもよいでしょう。人々のあいだで共有されている情報や想像上のイメージが、異なる夜の影響下において実体化したものです。

幅広く知られていたり、強く信じられているものがレジェンダリになりやすいため、神話や伝説の存在が実体化するというものが多いです。古来、伝説や神話にあらわれる幻獣・魔獣の類は、そうした人々の想像が生んだもの――文字通りの「生ける伝説」だったと考えられます。

伝説や神話、おとぎ話、語り継がれる物語を、1人でも信じている人がいる限り、この世のどこかでレジェンダリは生まれ続けます。文明社会においても、人々の噂から生まれた「都市伝説」が実体を持つことがあります。

また、まれですが、たった一人の人間が思いを向けたものであっても、その思いが極端に強すぎたりするとレジェンダリになる可能性があるのです。創作物の中の存在や、個人の妄想がもとになったケースもあります。

レジェンダリは、もととなった伝説のとおりの性質を持ち、その「設定」にもとづいた行動します。高い知性を持つものもありますが、かりそめの存在であって、生物として繁殖することはありません。放置すればさらなる「異なる夜」の到来を招くでしょうし、高位のナイトワンズがかれらを手駒として操ることもあります。

ソーサリーによってダメージを与えることで異なる夜の影響を破壊されるとレジェンダリは消滅します。

<レジェンダリの例>
斧の殺人鬼 都市伝説から生まれたレジェンダリで、ベッドの下にひそみ、帰宅した家人を惨殺します。デート中のカップルの車を狙う「ロープの殺人鬼」や、キャンプ場にあらわれる「チェーンソーの殺人鬼」などの亜種がいます。
高速女 「高速道路を走っていると、後ろから時速100kmで追いかけてきて追い抜きざまに目を合わせてくる。目が合ったら死ぬ」という奇怪な都市伝説が現実となったレジェンダリです。
怨霊御前 「無実の罪で刑死し、怨霊になった平安貴族」の伝承が実体化しました。女官や武人の霊を無限に召還し、牛車に乗って夜の街に百鬼夜行の行列を生み出します。

ナイトゴーント

ナイトゴーントは、この世界ではなく異なる夜に発生起源のある種の総称です。

この世界に出現することは少ないのですが、もしあらわれれば非常に危険な存在です。かれらの多くは知性をもち、コミュニケーションも可能ですが人類と平和的な関係を持つことは難しいでしょう。かれらは強大なソーサリーを行使するだけでなく、意のままに生み出したペイシェントやレジェンダリを使役してこの世界を侵略し、この世界に橋頭堡を築かんとしています。

ナイトゴーントにはさまざまな種族があり、互いに同盟や敵対関係をもっています。

<ナイトゴーントの例>
ブラックスーツ 黒衣の人間にやつしてあらわれることからこの名で呼ばれるかれらは、人間に「契約」を持ちかけてきます。かれらは人の望みをかなえてくれますが、必ず、悲惨な末路も用意しています。そうして人類を絶望へ導き、闇を広げていくことが目的なのです。
喰らうもの ただ「喰らうもの」とだけ呼ばれる、この巨大な獣が、伝説のドラゴンや八岐大蛇といった「巨大な爬虫類の怪物」のもととなったことは間違いありません。この獣が出現するとき、たった1体でもひとつの国を滅ぼすに十分です。過去にはそうして滅びた魔法文明もあるといいます。

ブギーマン~堕ちた魔法使い

魔法使いはつねに自身も異なる夜の影響を受けていますが、その影響が強くなりすぎると、メイガスソウルが暴走して肉体と人格が変容してしまいます。魔法使いはこの現象を「堕ちる」と表現し、「堕ちた」魔法使いをブギーマンと呼びます。

ブギーマンはライカンスロープのように異形の部位と能力を獲得しますが、ソウルレスが変異したライカンスロープとの違いは、もともと魔法使いであるのでその力と変異を自分の意思でコントロールできるという点にあります。

ブギーマンは人間とナイトゴーントの中間的な存在であり、もはやこの世界の敵です。ブギーマン化から生還した例もありますが、それがかなわない場合、かつての同胞への慈悲として、魔法使いはブギーマンを倒そうとします。

▲このページの上部へ